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about

暇なときは暇だと言いたいし、少しもきつくないときは平気な顔をしてたい。が、案外なかなかむつかしい。気分の下降には惰力が働いてしまうから、一度嫌な顔をしてしまうと、よく考えたら全然なんともないやということでもつい表情をうまく戻せなくなってしまう。
そして恐らく誰の中にもあるこの葛藤を、目の前の他人の内側にもあるものだと想像をできる人ばかりでない以上、ニュートラルな表情に戻ることへの水圧は外的な要因によっても補強され続け、人はケンカをし、仲直りの味の濃さは担保され、ラブソングは前進しない。それを愛おしいと思うし、山にこもって好きな植物とだけ会話していたいと思う時もある。


6月のイベントでテーマソングを作らせてもらった、円城塔さんの「バナナ剥きには最適の日々」の中で一番印象に残った部分は、何百年も宇宙を航行し続ける主人公がある星に着陸する時のことを想像するシーン。

何世代か前に、超光速航法を編み出した祖先たちが入植した土地に、僕はようやく辿り着いたというわけだ。骨董品の長い旅を労おうと、僕を迎えるためのびっくりパーティーを用意しておいてくれたのだ。まあその前に電波の様子で僕の方にも知れるだろうが。
(中略)
その頃には科学はもう人間の悲惨をとっくの昔に払拭してしまっており、人類はおとなしい動物のようにぼんやり過ごし、のんびりと暮らしているはずだから、反応が素朴なのは仕方がない。
SFと言われるジャンルにこれまで全く興味なかったおれが作家の想像力の一端の発露に感動したのは、科学が人間の悲惨を払拭し(人類が、とは言わないのである)、その発現がなんと”はるか彼方からやってきた宇宙航行者に対する素朴な反応“という形なのである。一日くらい迷った末に(何しろお話をもらってからイベント本番まで一週間だった)おれはある意味反対方向に、人間の愛おしい悲惨さを、でもやはり地味に表そうと曲を作った。歌詞を見られる場所が無いのでこちらに。



chacky

汚い川の流れている
近くの
赤茶けた長屋の中の
ひとつの
古いキッチンの
磨りガラスの窓
青い夕方の
光に浮かんだ

リンゴの置かれた
白い皿が
すこしくっついた
テーブルクロスの
花柄とシミが作る模様の
中に君はいた
踊っているような

たらんとろんたらんたん
ぱらら ぱらら

たとえば君は花柄模様の中にいて
踊って

たとえば君は宇宙のどこかにいて
覚えている/忘れていく




合唱団は、当初イメージした最低から最高の幅でいうとかなり最高のほうに近い状態で活動半年を迎えているけれど、いまの合唱団の状態を表現するなら、はじめにイメージした中には無かった要素が集団のもっともいい面を作っていると思う。大きな優しい可能性を感じています。ゆっくり、じっくり長く続いていく集団になるといいなと思っています。

lyrics

汚い川の流れている
近くの
赤茶けた長屋の中の
ひとつの
古いキッチンの
磨りガラスの窓
青い夕方の
光に浮かんだ

リンゴの置かれた
白い皿が
すこしくっついた
テーブルクロスの
花柄とシミが作る模様の
中に君はいた
踊っているような

たらんとろんたらんたん
ぱらら ぱらら

たとえば君は花柄模様の中にいて
踊って

たとえば君は宇宙のどこかにいて
覚えている/忘れていく

credits

from chacky, released October 28, 2016
gt./vo.よしむらひらく
cho.東京幽谷混声合唱団
pf.大森なつ実
Vc.杉山咲耶子

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